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166条2項2号の「災害又は業務に起因する損害」に該当するとすると,内閣府令が定める軽微基準の範囲内の損害とされ,罪には問われない可能性のある事案であったが,最高裁は,本件における副作用症例の発生は,166条2項2号イの「災害又は業務に起因する損害」の発生として包摂・評価され得ない性質の事実であるとして,166条2項4号(重要事実についての包括規定)の該当性を問題にすることができるとした(最判平11.2.16刑集53.2.1)。
学説では,インサイダー取引についての重要事実の列挙や軽微基準は形式的すぎる,これらはガイドライン的なものとして対応すべきである,166条2項4号の包括規定がインサイダー取引に関する普遍的な「重要性基準」を表しており,これだけで構成要件は十分明確であるなどの見解がある。 (d)重要事実の公表内部者取引規制は,内部者が,内部情報を知った場合は,その情報が公開された後でなければ,関係する証券の取引をしてはならないとするものである。
したがって,内部情報が公表されて,内部情報でなくなった場合には取引規制は解除される。 そこで,問題になるのが,どのような状態がここでいう公表に当たるかである。

166条4項は,同条1項などで規定されている「(業務等に関する重要事実の)公表がされた」とは,@重要事実について,当該上場会社等又は当該上場会社等の子会社により,多数の者の知り得る状態に置く措置として政令で定める措置がとられたこと,又は,A重要事実が記載された当該上場会社等若しくは当該上場会社等の子会社が提出した有価証券届出書,有価証券報告書,半期報告書,臨時報告書が公衆縦覧に供されたことをいうとしている。 @の「多数の者の知り得る状態に置く措置として政令で定める措置がとられたこと」については,証券取引法施行令30条が,上場会社等又はその子会社の代表取締役などが,重要事実について,2つ以上の報道機関に公開し,かつ,その事実が周知となるために必要とされる期間として,12時間が経過したことと定めている。
「公開買付け等」の実施に関する事実又は中止に関する事実を,法が定める方法により知った「公開買付者等関係者」は,その事実の公表がされた後でなければ,「株券等」の「買付け等」又は「売付け等」をしてはならない(証取167条1項)。 「公開買付け等」には,発行会社以外の者による公開買付(証取27条の2),これに準ずる行為として政令で定めるもの(上場または店頭登録されている株券,新株引受権証書,新株予約権証券,新株予約権付社債券(転換社債券)などを総株主の議決権の数の5/100以上買い集めること。
証取令31条),発行会社による公開買付(証取27条の22の2°いわゆる自社株買い)が含まれる。 「株券等」とは,「公開買付け等」の対象会社が発行する株券,新株引受権証書,新株予約権証券,新株予約権付社債券(転換社債券),およびこれらのオプションを表示する有価証券などである。
これらの証券であれば,公開買付等の対象となっている証券でなくとも,規制の対象となる。 なお,証券取引法166条の場合とは異なり,普通社債は含まれていない。
(a)規制対象者規制対象者は,証券取引法167条1項で,「公開買付者等関係者」として列挙されており,「会社関係者」についての166条1項とほぼ同様の定めが置かれている。 ただし,「会社関係者」の場合の「当該上場会社等」の用語にはその親会社と子会社が含められていたのに対し,「公開買付者等関係者」の場合の「当該公開買付者等」の用語には親会社は含められているが,子会社は含められていない(証取167条1項1号)。
(b)規制対象となる内部情報規制対象となる内部情報は,「公開買付者等」が「公開買付け等」を行うことを決定したこと,または,当該決定が公表された後,その中止を決定したことである。 ただし,投資者の投資判断に及ぼす影響が軽微なものとして,内閣府令で定める基準に該当するものは,除外される(会社関係者取引規制府令7条の3)。

(c)重要事実の公表167条4項は,「公表」について,@「公開買付け等事実」について,当該公開買付者等により,多数の者の知り得る状態に置く措置として政令で定める措置(証取令30条)がとられたこと,A公開買付開始公告または公開買付撤回の公告もしくは公表がされたこと,公開買付届出書,公開買付撤回届出書が公衆縦覧に供されたことをいうとしている。 (a)差益の提供義務「上場会社等」の役員または主要株主(名義の如何を問わず総株主の議決権の10%以上を保有する株主。
証取163条1項)が,当該「上場会社等」の「特定有価証券等」について,買付等をした後6ヵ月以内に売付等をし,または売付等をした後6ヵ月以内に買付等をして利益を得た場合は,当該「上場会社等」は,利益を得た役員または主要株主に対して,その利益を「上場会社等」に提供すべきことを請求できる(証取164条1項)。 164条1項は,「上場会社等の役員または主要株主がその職務又は地位により取得した秘密を不当に利用することを防止するため」に,利益の提供請求ができると規定しており,本条は内部者取引の規制を目的とした条文である。
したがって,このような秘密の不当利用の余地がないもの,または,少ないものについては,内閣府令により適用が除外されている(証取164条8項,上場会社役員売買府令5条・4条)。 なお,この適用除外について,最高裁は,証券取引法164条「1項の規定を適用する必要のない取引は内閣府令で定められた場合に尽きるものではなく,類型的にみて取引の態様自体から上記秘密を不当に利用することが認められない場合には,同項の規定は適用されない」とする(最大判平14.2.13民集56.2.331)。
また,同最高裁判決は,「同項は,客観的な適用要件を定めて上場会社等の役員又は主要株主による秘密の不当利用を一般的に予防しようとする規定であって,上場会社等の役員又は主要株主が同項所定の有価証券等の短期売買取引をして利益を得た場合には,前記の除外例に該当しない限り,当該取引においてその者が秘密を不当に利用したか否か,その取引によって一般投資家の利益が現実に損なわれたか否かを問うことなく,当該上場会社等はその利益を提供すべきことを当該役員又は主要株主に対して請求することができる」としている。 なお,同最高裁判決の上告人は,「株式の売り付けの相手方と,売り主(上告人)とは,代表者および株主を同一とする会社であるため,上記秘密の不当利用または一般投資家の損害の発生という事実はなく,このような売り付けについては,同項は適用されない。
そう解さなければ,憲法29条に違反する」と主張したが,退けられている。 以上のように,本条による利益の提供義務は,会社の役員・主要株主が6ヵ月以内の売買により利益を得たなら,それだけで生じ,内部情報が利用されたか否か,一般投資家や会社が損害を被ったか否かとは無関係である。
このため,本条による規制では,内部情報の利用の有無についての立証の問題を回避して,内部者取引の規制を行うことが可能となる。

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